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は じ め に
超高齢社会となったわが国においては,医療政策も主として高齢者対策に重点がおかれてきたが,2017年の第3期がん対策推進基本計画において小児および思春期・若年成人(AYA)世代の癌患者への対策が盛り込まれたことで,わが国の将来を担うべき世代の癌患者の抱える課題にも社会の耳目を集めるようになった.
AYA世代は,わが国の人口比率において約27%前後を占めるが,その癌罹患率は国立がん研究センターの統計では人口10万人あたり15~19歳で14.2人,20歳代で31.1人,30歳代で91.1人となっており,これらの罹患率を日本全体の人口にあてはめると,1年間に癌と診断される数は,15~19歳で約900例,20歳代で約4,200例,30歳代で約16,300例と推計されている1).さらに,AYA世代の死因においては,自殺の次に癌が多くなっており年間2,500名前後が癌により命を落としている.
AYA世代の癌の特徴としては,小児と成人のはざまにあって,生命予後(5年生存率)の改善率はほかの世代より低く,また世代特有の多岐にわたる課題に対応できる医療サービスや社会的なサポートも限られている.
疾患としては白血病,リンパ腫,胚細胞腫瘍,甲状腺癌,乳癌,子宮頚癌,大腸癌などが多いが,比較的頻度の少ない肉腫においても15~19歳の年代で骨腫瘍が9%と5番目に多い疾患としてあげられており1),それ以外の年代においてもほかの臓器癌に比して骨・軟部肉腫はAYA世代に好発する傾向にある.本稿では,AYA世代の肉腫患者が抱える問題に関して自験例をもとに機能予後と心理社会的課題を中心に調査し,問題の解決に向けた取り組みを考察する.
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