Japanese
English
骨粗鬆症と骨粗鬆症関連骨折に対する診断と治療 Ⅴ.上肢骨折の病態と治療
一般整形外科医が理解しておくべき脆弱性橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレートを用いた手術的治療のピットフォール
-――「遠位設置型は危険,近位設置型は安全」は本当か
An important point of a volar locking plate fixation of the distal radius for a general orthopaedic surgeon;a misunderstanding of relationship between plate profile and potential risk for flexor tendon complications
早川 和男
1
,
岡本 秀貴
2
,
渡邊 宣之
1
,
福岡 宗良
1
,
村上 英樹
2
K. Hayakawa
1
,
H. Okamoto
2
,
N. Watanabe
1
,
M. Fukuoka
1
,
H. Murakami
2
1公立陶生病院整形外科
2名古屋市立大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Tosei General Hospital, Seto
キーワード:
distal radius fracture
,
volar locking plate fixation
,
flexor tendon complication
,
plate prominence
Keyword:
distal radius fracture
,
volar locking plate fixation
,
flexor tendon complication
,
plate prominence
pp.164-169
発行日 2020年10月31日
Published Date 2020/10/31
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei78_164
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
比較的軽微な外力によって発生する脆弱性骨折は,一つの骨折が次の骨折を招く「ドミノ骨折」と称される1).橈骨遠位端骨折は,この骨折連鎖の最初に発生する「first fracture」と呼ばれ,高齢化に伴い増加する骨折患者に対応するため,手外科医のみならず,一般整形外科医も携わるべき疾患となった.掌側ロッキングプレート(volar locking plate:VLP)は,脆弱な骨においても強固な内固定を可能とし,安定した術後成績が得られることから一般に流布するようになった2).しかし,多様化するプレート形状と,VLP特有の術後合併症から,多くの整形外科医が治療に逡巡しているのも事実である.重篤な術後合併症の一つである屈筋腱断裂に関して,「近位設置型VLP」は安全だが,「遠位設置型VLP」は危険である,とか,より遠位に設置される「超遠位設置型VLP」は高率に合併症を引き起こすため,骨癒合後早期の抜釘が必要である,という報告をみる3,4).しかし,当院では幸いにも超遠位設置型VLPによる屈筋腱断裂例はない.一方で,遠位設置型VLPに加えて,近位設置型VLP使用後にも屈筋腱障害例を経験している.われわれは,設置位置に従ったプレート分類と,術後有害事象の発生リスクの関係を考察するために,5つのVLPを用いて治療した自験例をもとに,文献的考察を交えて報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2020