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は じ め に
高齢者における橈骨遠位端骨折に対する手術の是非についてはいまだに一定の見解が得られていない.しかしながら健康寿命が延伸した現代の超高齢社会においては高齢者といってもさまざまであり,一括りにできるものではない.単純な年齢だけではなく,活動性や利き手,独居や介護といった身体的・社会的背景までを考慮する必要がある.近年の研究においては保存的治療と比較して手術の優位性を示した報告が多く,高齢者であっても積極的な手術が推奨されている1,2).しかしながら橈骨遠位端骨折の治療後の骨粗鬆症治療については,いまだ積極的に介入されていないのが実状であり3),今後の課題といえる.橈骨遠位端骨折を生じた後の再骨折の危険性については通常の数倍とされているが4,5),手術後に限ると再骨折の詳細な報告は少ない.高齢者の増加や健康寿命の延伸に加え,積極的な手術適応によって橈骨遠位端骨折の手術件数は増加しており,今後は術後再骨折の増加も懸念される.
これまでの多くの報告から橈骨遠位端骨折の手術成績は総じて良好であるが6),術後の矯正損失は少なからず存在し,骨質が不良な高齢者の場合や,関節内骨折や骨幹端部の粉砕骨折を伴った場合などにおける橈骨短縮についてはある程度許容されているのが現状である.筆者らは掌側ロッキングプレート固定時に橈骨を牽引することによって間接的に尺骨短縮を行うことで最終的な橈骨短縮を抑制している.また術後数年が経過した後に生じたプレート遠位縁での再骨折の自験例では,関節辺縁骨折で近年注目されているリムプレートを使用することによって対応することが可能であった.本稿ではそれらの治療成績について文献的考察を加えて詳細に述べる.
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