COPD治療の新時代 21世紀の「社会的」生活習慣病
日本COPD疫学研究(NICE study)の意義と評価を検証する
福地 義之助
1
1順天堂大学 呼吸器内科
キーワード:
喫煙
,
職業別集団
,
性因子
,
努力呼気流量率
,
スパイロメトリー
,
発生率
,
リスク
,
年齢因子
,
肺疾患-慢性閉塞性
Keyword:
Age Factors
,
Forced Expiratory Flow Rates
,
Occupational Groups
,
Risk
,
Sex Factors
,
Spirometry
,
Smoking
,
Incidence
,
Pulmonary Disease, Chronic Obstructive
pp.213-216
発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2014069705
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日本COPD疫学研究(NICE study)は,2000年に施行された慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関するわが国最初の全国規模の疫学調査研究である.全国18都道府県の36医療機関において同意の得られた40歳以上の2,343名を対象にスパイロメトリーを施行した.対象者の性別,年代別構成は日本の全人口と類似の比率になるように無作為に抽出された.1秒率70%未満の気流制限(AFL)は10.9%に観察された.AFLは男子(16.4%)が女子(5.0%)より多く,高齢になるにつれ増加(60歳以上19.2%,40~59歳4.6%)した.喫煙歴ありの男性は女性よりもAFLが高率に認められた.GOLD分類のAFLステージ別にみると56%が軽症,38%が中等症であった.AFLは非喫煙者の5.8%,60歳以下の対象の4.6%に検出された.AFL例のわずかに9.4%のみがCOPDの診断を受けていたにすぎないことも判明した.AFL全例から病歴や自記質問票などの検討により気管支喘息が疑われる者を除外してCOPDと診断した被検者は8.6%であった.当時の保険診療記録からCOPDの診断名で診療を受けていたのは40歳以上の人口の0.2%とされていた.これは本研究結果からみた潜在的COPD患者の43分の1にすぎず,日本におけるCOPD未診断症例が大多数に上ることを示した.NICE studyは日本におけるCOPDの医療負荷が欧米諸国と同等以上に重大であることを初めて示した信頼すべき報告として評価できる.わが国におけるCOPD診療の里程標として今日まで内外で広く引用されていることは,その意義を検証するものといえる.
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