診療controversy medical decision makingのために 日本人2型糖尿病患者における血糖はどこまで下げるべきか(ACCORD studyを受けて)
それでも厳格なコントロールを目指すべき
植木 浩二郎
1
1東京大学 大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科
キーワード:
Insulin
,
血管疾患
,
Glycosylated Hemoglobin A
,
低血糖症
,
糖尿病-2型
,
強化インスリン療法
Keyword:
Diabetes Mellitus, Type 2
,
Insulin
,
Glycated Hemoglobin A
,
Hypoglycemia
,
Vascular Diseases
pp.136-141
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009247957
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「診療controversy」というタイトルの連載であるが、本件に関していえば、おそらくcontroversyは存在しないものと思う(少なくともわが国の糖尿病専門医のあいだでは)。糖尿病診療に携わるものは、1型、2型を問わず糖尿病患者の血糖値を健常者と同様に正常化することを目標に診療にあたっている。ただし、この場合の正常化とは単にHbA1cの正常化を指すものではなく、低血糖を起こさずに食前も食後も一定の範囲内に血糖をコントロールすることであって、しばしば困難を伴うことも事実である。仮に、内因性のインスリン分泌を移植などによらず健常者とまったく同じようにすることができる夢のような治療法が存在した場合を想定してみれば、誰も血糖の厳格コントロールに異を唱えるものはいないはずである。今回発表になったACCORD studyでは、強化療法群のHbA1cをみると確かにこれまでの大規模臨床試験ではみられなかったほどの低下をみているが、総死亡が増加していた。これは、血糖値を正常化しようという試みが間違っていたわけではなく、その方法が適切でなかったものと考えられる。われわれが、この研究結果から学ぶべきことを述べたい。
©Nankodo Co., Ltd., 2009