発行日 2007年1月1日
Published Date 2007/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2007160140
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例は21歳の男性で、4日前に出現した発熱、咽頭痛、頭痛により急性扁桃腺炎として加療されたが改善せず、発熱と強い頭痛により経過観察のために入院となった。項部硬直やKernig徴候は認めなった。白血球増加を認めたが、生化学検査には異常はなく、意識清明で神経学的異常を認めなかった。髄液検査では髄液圧の上昇を認め、単核球優位の細胞増加、蛋白上昇、ミエリン塩基性蛋白の上昇を認めたが、ウイルスによる脳炎、脳症、髄膜炎は否定された。5日目に軽度の項部硬直とKernig徴候が出現し、6日目に失見当識、ミオクローヌスが出現し、両上下肢の腱反射亢進を認め、ヘルペス脳脊髄炎の可能性を考慮して加療を行った。その後も神経症状は増悪し、意識障害、両側眼球の外転障害、両下肢の弛緩性麻痺と第4胸椎レベル以下の感覚障害を認め、項部硬直は高度となり、麻痺性イレウスの併存が疑われた。頭部MRI検査、背髄MRI検査にてT2強調画像で延髄及び下部頸髄から尾側の全背髄にかけて広範に高信号域が認められた。脳幹と背髄を主座とする急性散在性脳脊髄炎(ADEM)としてステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量療法を施行したが、神経学的改善は認められたものの、最終的に対麻痺と膀胱直腸障害を残した。
©Nankodo Co., Ltd., 2007