発行日 2001年2月1日
Published Date 2001/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2001135053
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症例は43歳女性で,左方向への眼球偏倚及び頭部回旋とそれに続く左上肢の痙攣発作を主訴とした.症状発現の前月にタイへの渡航歴がある.脳波では右中心頭頂部に鋭波を認め,頭部MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示しガドリニウムで輪状に増強される病変が中前頭回を含む右前頭葉上部にみられた.転移性脳腫瘍を考えての検査では胸腹部CTで異常なく,甲状腺エコーで左葉に径約1cmの辺縁不整な腫瘤が認められ,吸引細胞診で乳頭状腺癌と診断した.脳神経外科で腫瘤摘出術と甲状腺左葉切除術とを同時に施行した.腫瘤は嚢胞を形成していた.摘出標本では頭節と鉤は確認できなかったが,表層が3層構造の内部に迷路様構造を伴う有鉤嚢虫に特有な構造が認められた.抗てんかん薬の服薬を中止後も痙攣発作はみられず,7日間の駆虫療法を施行した.以後経過は良好である
©Nankodo Co., Ltd., 2001