発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011257497
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
55歳男。圧痛を伴う右鼠径部膨隆を主訴とした。右鼡径部に圧痛を伴う弾性・硬の膨隆を認め、徒手的還納を試みるも不可能であった。血液検査では炎症反応の上昇を認めた。以上より右鼠径ヘルニア嵌頓の術前診断で緊急手術を施行した。鼠径管を開放すると、ヘルニア嚢は恥骨上から脱出しており内鼠径ヘルニアと診断した。ヘルニア内容は血性腹水であった。術中、下腹部正中に周囲と強固に癒着した硬い腫瘤を触知した。悪性腫瘍の腹膜播種・血性腹水と判断し、鼠径ヘルニア嚢腫瘍を疑った。病理組織学的所見でヘルニア嚢の内部に白色結節を認め、HE染色では大型の細胞が瀰漫性に周囲を圧排して増殖していた。免疫染色ではB細胞に特徴的なCD20、CD10、CD79が陽性であった。手術に翌日に全身検索を行い、CTで下腹部正中の小腸に約8cmにわたって全周性の肥厚を認めた。腫瘤前方の大網には濃度上昇域があり、複数の小結節を認めた。以上より、小腸原発悪性リンパ腫、diffuse large B cell lymphoma、Lugano分類StageIV、その腹膜播種による転移性鼠径ヘルニア嚢腫瘍合併と診断し、当院血液内科にて化学療法を開始したが、手術から5ヵ月半後に死亡した。病理解剖では、回腸末端から口側20cm付近の原発巣が骨盤内に入り込み、高度に周囲に浸潤し、S状結腸・膀胱への穿通を認めた。
©Nankodo Co., Ltd., 2011