特集 分野別・必読論文選考対談:次世代に語り継ぐ論文はどれか?
がんと代謝可塑性
曽我 朋義
1
,
佐谷 秀行
1慶応義塾大学先端生命科学研究所 メタボローム研究グループ
キーワード:
Fumarates
,
解糖
,
酸化的リン酸化
,
腫瘍
,
腫瘍マーカー
,
食事療法
,
身体運動
,
学術論文
,
メタボロミクス
,
Alpha-Hydroxyglutarate
,
代謝産物
,
Isocitrate Dehydrogenase 1
Keyword:
Diet Therapy
,
Academic Dissertations as Topic
,
Fumarates
,
Glycolysis
,
Oxidative Phosphorylation
,
Neoplasms
,
Exercise
,
Biomarkers, Tumor
,
Metabolomics
,
Alpha-hydroxyglutarate
,
IDH1 Protein, Human
pp.182-186
発行日 2016年2月22日
Published Date 2016/2/22
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曽我 長い間,発がんの根本的な原因は遺伝子変異で,あくまで代謝物はその結果だと考えられていたように思います.ところが近年,代謝物が発がんに関わっていることが新たにわかってきました.1は,2-HG(2-hydroxyglutarate)が発がんに寄与する代謝物であることを見いだし,オンコメタボライトという新たな概念をもたらした論文です.ミトコンドリアのTCA回路にはイソクエン酸からα- ケトグルタル酸( α-KG)に変換するイソクエン酸脱水素酵素IDH-1/2(isocitrate dehydrogenase-1/2)という酵素がありますが,IDH-1/2の変異があると,α -KGではなく2-HGが産生され,α -KG依存性のHIF-1(hypoxia-inducible factor-1)水酸化酵素(PHDs)やTETs(DNA脱メチル化酵素),ヒストンリジン脱メチル化酵素(KDMs)などが阻害されます.その結果,HIF-1の安定化やDNA・ヒストンのメチル化が亢進されて発がんに至ることがわかりました.また,IDH1/2の変異は急性骨髄性白血病(AML)や神経膠腫(グリオーマ)で高頻度に見られることから,新たな創薬標的としてもIDH-1/2,2-HGが注目されています.
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