特集 バイオNMR:細胞内分子の真の動的構造と相互作用を明らかにする
せるてく・あらかると
不均一系NMRの黎明期を振り返る
甲斐荘 正恒
1
1首都大学東京理工学研究科・名古屋大学構造生物学研究センター
pp.835-836
発行日 2014年7月22日
Published Date 2014/7/22
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生体内では,様々な物質が時々刻々とそれらの存在量,空間分布,立体構造,さらには動態を変化させつつ,複雑な相互作用に関わっている.本特集には,NMR法が幅広い測定対象に適用できる柔軟な手法であるという原点に立ち戻り,生体分子をあるがままの“真の姿”として捉えるため,生体系NMR再生への思いが込められている.このような発想そのものは決して新しいものではない.すでに40年あまり前に遡るが,私も同じような考えから,様々な不均一系試料のNMR測定に取り組んだことをつい先日のように思い出す.この間,超伝導磁石を利用する高磁場NMR装置の進歩と普及,多次元NMR法を中核技術とする立体構造解析法の発展,さらには遺伝子組換え技術を利用した安定同位体標識試料調製法の高度化など,予想もしなかった画期的な新技術が登場し,NMR法の発展基盤は大きく強化された.このような状況が,逆に若い研究者諸氏にとってはNMR研究が踊り場に差し掛かっているように見えるのかもしれない.時計の針は大きく戻ることになるが,バイオNMRの将来を展望する機会に,かつて世界を驚かせた不均一系NMRの黎明期を振り返ることは無駄ではあるまい.
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