特集 性決定分化の制御システム:疾患性差・性転換をもたらす♂化・♀化のせめぎ合い
せるてく・あらかると
Y染色体は本当になくなる?
黒岩 麻里
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1北海道大学大学院理学研究院生物科学部門 旧動物染色体研究室
pp.170-171
発行日 2013年1月22日
Published Date 2013/1/22
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哺乳類のY染色体は,どんどん短くなり,遺伝子も少なくなってきています.ヒトでは,重複コピーを除くとおよそ30種類程度の遺伝子しか残っていません.Y染色体は,元々はX染色体と相同であったと考えられており,Xには1,000種類以上の遺伝子が存在することから,Yは退化の一途をたどってきたことが理解できます.Y染色体は塩基配列を解読しにくいため,Y染色体のゲノム配列が明らかになっている種は少ないのですが,マウスや霊長類,家畜の報告を見ると,ヒトのYには,哺乳類の中でも遺伝子が多く残されている(まだマシ?)ようです.このYが,いつか消えてなくなる,と言われています.その話(説)にさらに尾ひれがついて,「Yがなくなって男性がいなくなる,そして人類が滅亡する」とまで飛躍しています.Y染色体には雄性決定遺伝子と精子形成に関わる遺伝子が存在するため,Yなくして男性は生まれてきません.哺乳類は単為生殖ができないので,男性がいなくなり,女性だけになったら子孫は残せません.よって,Y染色体の消失が人類滅亡を招く,のだそうです.
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