第2特集 児童虐待対応
各論
日常診療から始める児童虐待対応
-家庭医が地域で実践できること
吉羽 史織
1
1亀田ファミリークリニック館山
pp.876-879
発行日 2026年6月1日
Published Date 2026/6/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2026070017
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はじめに:なぜ今,総合診療医・家庭医が虐待対応を学ぶのか
児童虐待対応件数は増加の一途をたどっているが,医療機関からの通告は全体の約2%に留まっている1).多忙な日常診療のなかで,「通告」という言葉のもつ心理的ハードルや,家族との信頼関係が崩れることへの懸念から介入を躊躇する医師も少なくないだろう.だが,われわれ総合診療医・家庭医には,ほかの科にはない強みがある.第一に,「親子を同時にケアできる」点である.虐待の背景には,親の精神疾患や貧困,被虐待経験といった負の連鎖が隠れていることが多い.小児科医が「子ども」の専門家として患児と向き合う一方で,われわれは親の主治医にもなり得る.「お母さん,最近眠れていますか?」,「お父さん,体調はどうですか?」と,親自身の健康問題にアプローチすることで,自然な形で家庭の内情に触れることができる.親の身体的・精神的な不調をケアし信頼関係を築くことが,結果として育児不安を軽減させ,子どもを守ることにつながるのである.第二に,虐待が深刻化する前の接点である.われわれはかぜや予防接種など,よくある日常診療の場面で家族と繰り返し顔を合わせる.「なんとなく表情が暗い」といったささいな変化に気づけるのは,地域に根ざしたわれわれならではの機能である.「虐待」などの判定が出る前のグレーゾーンの段階で行政と連携し,早期に支援につなぐ.これこそが,われわれに求められている役割である.本稿では,ある地方都市において一家庭医がどのような視点をもち,地域と連携して虐待対応に取り組んでいるか,その実践例を紹介する.

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