第1特集 エコーを聴診器のように使おう!
こんなとき,エコーが活きる!
転倒・外傷の身体所見×エコー
-─X線装置のない環境での重症度判断─
伊藤 菜々子
1
1鋸南町国民健康保険 鋸南病院
pp.1699-1703
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025130010
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はじめに
自宅や施設での転倒,ベッドからの転落といった外傷は,プライマリ・ケアの日常診療で非常に多く経験するシチュエーションである.「胸を打って痛がっている」,「なんとなく動けない」といった訴えで受診する患者は少なくないだろう.患者の多くはバイタルサインが安定し,受傷後も普段どおりに過ごしているが,その印象だけで「軽症」と判断するのは危険である.高齢者は骨粗鬆症やサルコペニア,認知機能低下などを背景に,わずかな外力でも骨折や臓器損傷を起こしやすい.加えて疼痛の自覚が乏しい,記憶があいまいで受傷機転を説明できない,聴診や打診の判定が難しいといった要素が重なるため,身体診察だけでのリスク層別化には限界がある.
このような診察において,われわれの臨床診断を支えるツールが,これから紹介するpoint of care ultrasound(POCUS)である.夜間は病院に放射線技師がいなかったり,在宅や施設ですぐに画像検査ができなかったりと臨床診断に迷う場面に筆者も多々遭遇してきたが,このような状況でこそPOCUSの有用性を実感してきた.本稿で,少しでも読者の皆様にPOCUSの魅力を感じていただければ幸いだ.

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