第1特集 エコーを聴診器のように使おう!
こんなとき,エコーが活きる!
頭頸部の身体所見×エコー
-─頸部の腫れ,痛みの鑑別─
古川 まどか
1,2
1愛知医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
2昭和医科大学横浜市北部病院 甲状腺センター
pp.1654-1658
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025130002
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はじめに
頭頸部領域では「首が腫れている」,「首が痛い」,「のどが痛い」などがよくある訴えである.これらの訴えは患者によっては「頭が痛い」,「肩が重い」,「のどが詰まる」などと表現されることもある.また,症状を感じる神経の走行や分布,さまざまな臓器の機能の性質上,実際の病変が存在する部位と患者が症状を訴える部位が異なることも頭頸部領域の特徴である.
頸部の腫れや腫脹を訴える患者は,まず何科にかかればいいか迷った挙句,さまざまな診療科を受診することになる.したがって,診療科を問わず,頸部に症状を有する患者のプライマリ・ケアを行うための知識をもっている必要がある.また,頸部にはたくさんの臓器が狭い範囲に集まっているため,病変の存在と局在を手早く診断できるエコーが非常に役に立つ.先に述べた理由により,頭頸部領域をエコーで診断する際には患者が症状を部位だけでなく,頸部全体の情報を可能な限り短時間で効率よく収集することが重要になる.
頭頸部領域の腫脹や腫瘤を生じる主な臓器は,唾液腺,甲状腺,リンパ節の頻度が高いが,そのほか,口腔,咽喉頭,副鼻腔,皮膚・皮膚付属器,神経,血管,筋肉などもあげられる1).また,頭頸部領域の痛みには肉眼的な器質的変化に乏しい神経痛や血管痛もあるため,プライマリ・ケアにおけるエコーで形態的異常の有無をまず判断することも重要である.

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