第2特集 軽度認知障害疑いの方を支える
軽度認知障害とプライマリ・ケア
認知症が進行する前にしておくべき準備
-遺言書,任意後見制度,高齢者等終身サポート事業者の活用について
岡江 晃児
1
1一般社団法人愛の会 主任ソーシャルワーカー
pp.1466-1468
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025110019
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はじめに
年齢を重ねるにつれて誰でももの忘れが増えたり,新しいことを覚えるのが難しくなったりする.こうした変化は,誰もが直面する可能性のあることである.しかし,「もしかして,認知症の始まりかもしれない」と感じたとき,漠然とした不安を抱え,何をどうしたらいいかわからなくなる方も少なくない.
筆者は,医療機関や行政機関にて約20年間ソーシャルワーク実践を経験した後,現在は身寄りのない方などへの身元保証や生活支援,死後事務などを行う高齢者等終身サポート事業のソーシャルワーカーとして日々従事している.当事業は民法上の契約となるため,相談や契約されるクライエントは認知機能が十分な方が対象であり,元気な方や認知症が進行する前のクライエントが多い.そしてそのクライエントと今後の万が一に備え,身元保証のこと,日常生活や金銭管理,そして死後の葬儀や相続などについて検討し,遺言書作成や事前に葬儀や墓じまいなど納骨,相続などについて関係者と調整し,事前に準備しておく.その結果,不安が和らぎ,安心してこれからの人生を歩む姿をみていると,早期の準備が何よりも大切であると日々実感する.認知機能が十分なうちにクライエント自身の意思を明確にしておくことで,将来の生活を自分らしく,尊厳をもって生き抜くことができるだろう.
本稿では,認知症が進行する前にしておくべき準備において,遺言書,任意後見制度,高齢者等終身サポート事業者の活用の観点から述べていく.

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