カンボジア看護紀行・3
センター開設前の準備
手柴 房子
1
1国立東京第一病院手術室
pp.56-57
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912768
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村人の風景
物珍しがって現地人が,日本人見物に来るのと同様に,私たちに目に入るものすべてが珍しく感じられたことは申すまでもありません。村の社交場であるマーケットに行っても買物をするよりも人々を見,彼らに接触してまわる方が多かったといっても過言ではなかったでしょう。柏谷さんなど早くもサロンを着て,勇敢に村人の中にとけこんでいったものです。看護紀行という見出しで書き出した文ではありますが,本題に入る前にもう少し現地人の姿をみつめてみたいと思います。
美しい街ブノンペンでは街の美に対してそこに住む人々が大変貧弱に映ったものですが,私たちの任地モンコールボレーに参りますと今まで貧弱に見えたブノンペンの人々が,ハイ・ソサィアティで生活するトップモードの人々のように感じられたほどこの村人たちの姿が気の毒なくらい貧しくみえました。外見だけで人のことは何とも申せませんが,彼ら全体に衣服は大変に粗末で暑い国のせいも加わってか,男女ともに上は簡単なブラウスがシャツで下はつぎの当ったズボンかサロン,女性は皆サロンをまとい約半数またはそれ以上の人がはだしで,他はゴムゾウリというスタイルですが,この衣類,いつ洗濯したのかしらと思われるような汚れたものが多く,お世辞にも目を楽しませてくれるような色彩のものは少なく,どちらかといえば男性の方がおしゃれをしているようです。
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