第2特集 不登校に対して医師ができること
「学校に行けてない」と言われたら
精神疾患と不登校
緒方 治彦
1
1関西医科大学 精神神経科学教室
pp.787-789
発行日 2025年5月1日
Published Date 2025/5/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025060020
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はじめに
不登校は単なる「学校への行き渋り」ではなく,生物学的・心理発達的・環境的背景が絡み合い生じる状態像であり,疾患とは異なる.また,個々のケースによって状態像も多様である.近年,わが国における不登校児童生徒数は増加傾向にある.文部科学省が令和6 年に発表した『令和5 年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』1)では,小・中学校の不登校児童生徒数は346,482人(前年度299,048人)であり,前年度から47,434人(15.9%)増加し,過去最多を記録した.同調査での小・中学校における学年別不登校児童生徒数は,学年が上がるにつれて増える傾向にあった.また,不登校児童生徒について把握した事実として,小・中学校においては,「不安・抑うつの相談があった」(23.1%)があがるなど,学校や家庭などの環境的背景以外の児本人の生物学的背景を暗示する結果となった.生物学的背景である神経発達症群の疾患やそれ以外の精神疾患が関与するケースでは,早期発見と適切な対応が求められることがある.しかし,精神科専門医の不足や,保護者の精神科受診への抵抗感から,多くの場合はプライマリ・ケア医が最初に相談を受ける立場となる.本稿では,不登校の背景にある精神疾患に焦点を当て,概説していく.

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