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はじめに
AI(artificial intelligence)という言葉は世間に十分広まった.しかし実際の役割や能力 について深く理解することは難しい.人間のように思考し,感情をもち,すべての問題を 自動的に解決できる「万能なAI(汎用AI)」が存在すると誤解しがちである.しかしながら 現代のAIは汎用AIに到達していない.特定の「タスク」に特化して高いパフォーマンスを 発揮する「狭いAI」が現実的な技術である. 本稿ではとくに第三次AI ブーム以降の機械学習・特徴表現学習・深層学習を使用した 技術をAI と表現する.機械学習は人間の学習に相当する仕組みを機械で実現するもので ある.アルゴリズムを使用した前世代的な技術から比べると,膨大なデータを学習したモ デルにより特定のタスクの精度は飛躍的に向上した.タスクはAI が特定の問題を解決す るために設定され,科学的な評価もタスクごとの精度に基づく.医療現場でのAI の活用 を議論するためには,あるAIが実行できるタスクを理解し把握することが重要である. 現代のAIの大きな利点は,機械による膨大なデータの迅速な解析によるTimeliness(適 時性)への貢献である.また均一な質を提供することでSafety(安全性)やEfficiency(効 率性)に,また個別化医療によるPatient centeredness(患者中心性)にも寄与する可能性 がある.一方,大きな制限に計算過程や変数の重みづけなどを人間が理解できるよう説明 することが難しい点があげられる.その点で人間が想定する十分なSafetyやEffectiveness (有効性)は必ずしも保証されない.またAIを使用できる状況の格差が存在し,Equity(公 平性)も十分ではない.
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