連載 看護関係の心理・9
構造できまるbad object
小此木 啓吾
1
1慶応義塾大学医学部
pp.1194-1198
発行日 1973年9月1日
Published Date 1973/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916762
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愛を向ける憎しみが!
看護者,とりわけ精神科看護者である以上,ゲルトルット・シュウィング(Gertrud Schwing)の名を知らない人はいないだろう.かつてウイーンで,分裂病者の精神療法に偉大な足跡を残した彼女のパーソナリティーは,まるで中世の聖者をほうふつとさせるものがあったという.そして,彼女が分裂病者と接触するうえで,最も基本的な態度として説いたのが,母性愛であったが,それは忍耐つよい,無私の受容(acceptance)とよび得るような‘やさしさ’であった.
ところが,彼女や彼女の師であった精神分析医Paul Federnによってその道を開かれた分裂病の精神療法は,やがてウイーンからアメリカへとその舞台を移すのだが,この推移とともに,Federn,Schwing式の接近が必ずしも妥当ではないという臨床経験が注目されるようになった.
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