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はじめに
高齢社会は,急性期を担うクリティカルケア(重症集中ケア)領域にも変化をもたらしている.例えば,クリティカルケアの代表的な場である集中治療室においては,高齢者の患者収容数が数年間で急激に増えてきている.その背景としては,人口構造の高齢化はもちろんのこと,術中,術後の全身管理技術の進歩に相まって,高齢者に対する手術適応も拡大し,高リスクのケースに難度の高い治療が提供されていることが考えられる.
高齢者は,複数の慢性疾患を有している場合や,呼吸,循環,代謝系をはじめとした重要臓器の予備能が低下していることは周知のところである.臨床においては,さまざまな侵襲的治療やケアへの安全閾が狭く,薬剤の副作用多発と低効果,合併症と易重症化の発生頻度が高い,ストレスに対する生体反応が緩慢,疾患の症状・所見が非定型性,せん妄・不穏を生じやすいことなどが問題点として指摘されている.そして,これらの背景により高齢者は回復過程が遅延しやすいと言われている.
しかし,高齢者に対しては非高齢者とおよそ変わりなく高度と言われる医療が一定のスケジュールで積極的に提供され(図1),良好な結果を得てきていることも事実であり,クリティカルケア看護を提供する看護師は,高齢者の特徴と問題点を十分に認識,理解したうえで看護実践をすることが必要である.クリティカルケア看護の実際としては,高齢者の特徴を踏まえたうえで,非日常性のなかで日常性を維持するための援助,細胞レベルのフィジカルアセスメントと心理的・社会的アセスメント,重篤化の回避と早期回復に向けた諸機能維持と向上のためのアプローチが必要である.
本稿では,重症集中ケアを実践するうえで必要な高齢者の生理学的特徴と看護ケアの方針について,集中治療の場を前提として概説する.
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