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はじめに
高齢者人口の増加とともに老人を対象にして看護する機会も多くなってきている.高齢者は,加齢とともに身体的な変化が現れ,壮年とは異なる特性をもつ年齢集団である.
高齢者に質の高い看護を提供するためには高齢者の精神的・社会的・身体的な特性を理解したうえ,適切な看護を提供する必要があることはよくいわれてきた.
最近「生活の質」という言葉がいろいろの学問領域でいわれ,さまざまな側面での研究が進められてきた.その「生活の質」に影響する要因は数多いと考えられるが,人間の生体リズム(biological rhythms)も1つの要因として考慮されなければならない.
生体リズムにはさまざまなものがある.例えば,呼吸や脈拍のように1分以内のものもあれば,睡眠サイクルのように90分前後のものもある.ここでは人間の生活の単位である1日を周期とするcircadianリズムと関連する文献をまとめながら述べていきたい.
なぜならば,ある人のcircadianリズムはその人の日常生活の全般にかかわっているからである.「朝何時に起きたか」,「夜何時に寝たか」,「何時間寝たか」,「何時に食事したか」ということは「その日の仕事」や「その日のセルフケア行動」等に少なからぬ影響を及ぼす.その影響はただ仕事がうまく遂行できるかどうかということに止まらず,精神的・社会的な側面に影響を及ぼすのである.
しかし,看護学においてcircadianリズムの影響を調べた研究はまだ少ない.また,circadianリズムは老化しても残存するという報告もあり,高齢者に及ぼす影響を多方面で検討研究する必要があるだろう.
本稿では,高齢者の看護で見逃されがちであるcircadianリズムおよびその関連事項について述べてみたい.特に「circadianリズムと健康」,「circadianリズムと高齢者の看護」等について記述し,老年看護におけるcircadianリズムの意味を考察する.このような考察を通じて,本稿が高齢者看護・老年看護の実践に少しでも役に立てれば幸いである.
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