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Ⅰ.緒 言
全国の病院や診療所に所属する看護職員を対象とした調査(日本医療労働組合連合会,2017)によれば、対象者のうち、「慢性疲労」は約7割、「健康不安」は約7割、「強いストレス」は約6割、「健康不調」は約3割(全産業の約2倍)を訴えている。また、「休憩時間がきちんと取れている」は約3割、「十分な看護ができている」は約1割に過ぎず、その理由として約8割から「人員が少なく業務が過密」が挙げられている。このように、夜勤や長時間労働などに起因すると思われる慢性的な疲労、ストレスや人員不足は、現在の看護師の労働環境における大きな問題となっており、このような状況は医療サービスの質の低下をもたらす恐れがある。
一方、わが国では少子超高齢化の進行、そして医療の高度化や国民意識の変化によって、医療・介護ニーズは増大するだけでなく、多様化・複雑化も進んでいる。こうした変化によって、近年では看護職が果たす役割の拡大とともに、活躍する領域や場の多様化が進んでいるとされている(日本看護協会,2016)。そのため、看護実践能力の維持、向上が重要な課題と考えられる。
看護実践とは、看護職が対象に働きかける行為であり、看護業務の主要な部分を成すものをいう(日本看護協会,2016)。このような看護実践能力の維持、向上を目指すためには、何らかの評価が必要となる。そこで、これまで質問紙による評価尺度、実践ポートフォリオ、Objective structured clinical examinations(OSCEs)などによって評価されてきた(Flinkman et al.,2017;髙瀬 他,2011;Wilkinson,2013;Yanhua et al., 2011)。しかし、多くの評価方法が人の判断に基づくために主観の入る余地があるとともに、多くの時間や労力が必要とされる。そのため、現在の看護師の労働環境の悪さを考慮すると、このような方法での看護実践能力の評価はさらなる状況の悪化を招く可能性が高い。
この問題を改善する一つの手段として、看護実践能力のうち特に行動レベルの能力については、電気機器や電子機器による評価の自動化あるいは機械化が有用と考えられる。評価を自動化あるいは機械化するにあたっては、看護師の活動・行動の測定が可能であることが前提となる。しかし、看護師の活動・行動測定に電気機器や電子機器を使用した研究の数や特徴など、研究の動向を明らかにした報告は管見の限り存在しない。
そこで本研究においては、電気・電子機器による看護師の活動・行動測定方法に関連する研究動向を概観し、今後の課題を明らかにすることを目的とした。
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