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はじめに
移植医療は、他者からの自発的な臓器提供がなければ成り立たない医療であり、移植をうけた患者が、一生涯免疫抑制剤を服用しなければならないというこの2点に於いて、他の治療とは大きく異なる。
1989年11月に第一例目の生体肝移植が実施されて以降、現在まで3000例を超える生体肝移植が本邦で行われている。1997年10月に脳死臓器移植法案が成立しその後23例の脳死肝移植が行われた。しかし脳死臓器移植は年間数例に留まり、問題解決には多く時間を要する。生体肝移植症例はこの10年余りで成人症例への適応疾患の拡大、右葉グラフトの使用とともに着実に増加した。移植手術手技、臓器保存、免疫抑制療法の進歩、更には免疫抑制剤減量に始まる免疫寛容の研究(実際に免疫抑制剤の離脱症例も当施設に於いて50例以上を数えている)等、移植医療発展に寄与している。
肝移植後長期フォローにおける患者のQOLと社会復帰、またそのうち再移植に至った症例については、本人、家族にとっては再び大きな選択を迫られることとなる。また適応疾患の拡大にともない、ウイルス性肝硬変症・肝細胞癌に対する肝移植が増加し、移植後原疾患再発の問題と予防策についての検討が急務である。成人症例が増加するにつれ、患者(レシピエント)と臓器提供者(ドナー)の続柄も多岐に亘り家族関係の多様化、ドナーの合併症、私費診療における高額の医療費の負担等、家族の抱える問題も大きい。
一昨年5月には、誠に残念ながら生体ドナーの死亡という家族にとって最も辛い結果をまねくこととなった。今後二度とこのようなことの起こらないために、レシピエント、生体ドナーの術前、術後の管理は医学的な側面だけでなく、心理社会的な側面からも非常に重要である。生体肝移植は自発的な臓器提供候補者の尊い意思のもとに成り立つ医療である。その尊い意思を活かすためにも、レシピエントとその家族、また生体ドナーとその家族が少しでも不安なくそれぞれの立場で治療に参加し、悔いのない治療がうけられるようにすべきである。医師、看護師だけでなく、コメディカルスタッフによるサポート、チーム医療が非常に重要となる。
これら移植医療を継続し、安全かつ円滑に行うため、その一握を担うレシピエントコーディネーターの役割について概説する。
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