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Ⅰ.はじめに
てんかんは小児期から発症することが多く、てんかんがある人は日本人で人口の1%、100万人に上るといわれる。また、てんかんはけいれんが起こる脳の慢性の病気であり、薬物治療によって7〜8割緩解するが、長期間の治療を要する。そのため、てんかんをもつ本人だけでなく、家族も含めて何百万人もの人たちがてんかん発作に関連した現象に悩まされている。特に、難治性である乳幼児期に発症するウエスト症候群やレノックス・ガストー症候群は、有病率としては全てんかんの40%を占めるといわれ、一日に数十回も起こるけいれん発作以外に、発育の退行や発達の遅れおよび障害を伴うことが多い1)。また、発達障害をもつ子どもの母親やその家族における日常生活上の療育や育児に対して困難が多いことから、難治性てんかんをもつ子どもの母親とその家族にとっては日々の生活すらままならない状況があることは容易に想像できる。
一方、最近のわが国では、一般の子どもを持つ母親の育児不安・困難がクローズアップされ、行政施策による育児支援サービス「エンゼルプラン・新エンゼルプラン」が計画的に行われ2)、現在も「健やか親子21」のように強化され進行中であるが3)、虐待などの報道ニュースは後を絶たず、これらの行政施策には問題が多く残されている。さらに、障害者(児)の医療保健福祉においても「障害者プラン」の施策がとられ、ヘルスプロモーションの理念のもと「支援費制度」による障害者(児)のデイケアなどの日常生活サポートシステムは改善されてきているが、医療的ケアが必要とされる居宅サービス事業では公的利用機関等皆無の状態に等しいと言われている4),5)。これらの状況を合わせると、難治性てんかんをもつ子どもとその母親・家族の日常生活において、乳幼児期では療育を含めた育児不安・困難、学童期等ではセルフケアの課題を持つ学校生活など、何らかの困難があることが予想される。後者の学童期については、武田らが、てんかんを含めた慢性疾患を持つ子どもの学校生活におけるQOLを高め、セルフケアを可能にするためには家族・医療機関・学校の協力的連携が必要であるという課題を明らかにしている6),7),8)。前者の乳幼児期では、子どもの療育・育児を行っていかなければならない母親や家族についての研究は皆無に等しい。日本におけるこれらの研究は、1998年の日本てんかん協会東京支部の依頼による福山らの「診断後20年余にわたる子どもと家族の生活予後に関する研究」9)が唯一であろう。この調査研究では、点頭てんかんを持つ患者が発症・診断から調査時点に至る期間の療養生活状況について調査しており、診断治療などの改善はみられてきているが子どもの成長発達や子育てについての改善がみられていないこと、療養生活支援に関わっている専門職は医師が多く看護職が少ないこと、等を報告している。しかし、この点頭てんかんに関する調査研究は対象が点頭てんかんをもつ子どもと家族であり、医療福祉教育関係を対象とする実態調査は行われていない。
先進諸国の北米においてはてんかんへの包括的ケアは進み10)、てんかんをもつ子どもとその母親および家族への個別的セルフ管理・指導まで展開されている11),12),13),14),15)が、点頭てんかんなどの難治性てんかんについて言及された研究は散見されない。
そこで、まず、わが国における難治性てんかんをもつ子どもの看護は実際どのように行われ、どのような問題があり、重要な看護および今後の課題にはどのようなものがあるのか、検討する必要があると考え、文献研究を行ったので報告する。
用語の定義
重要な看護:検索された文献の著者らが重要あるいは大切であると述べている看護をいう。
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