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はじめに
近年、長期療養を必要とする慢性疾患患児の療養の場は施設から在宅へと移行してきている。なかでも人工呼吸器や気管内チューブなどを使用する小児の在宅療養では、デイケアなどの受け入れ施設も少なく、日々のケアを担う家族の負担は大きいことが指摘されている1)2)。また在宅療養に移行した患児が社会資源を活用する場合、通常はそれぞれの家族が情報を集め、必要な手続きを行わざるをえない現状にあり、小児の在宅療養のための系統的なケアの提供システムが望まれている。
一方米国では、病棟や外来部門にケースマネージャーという職種があり、患者の必要とする治療とケアを計画し手続きをする。この計画に沿って入院中から在宅療養に移行した後も継続して治療とケアの提供がなされており、わが国とは異なったヘルスケアシステムが存在している3)4)5)6)。この職種が出現した背景には、米国のヘルスケアシステムにおいて、健康保険の会社が支払う医療費や病院が支払う費用を抑制することが強く求められているという事情がある。その主要な理由としては、米国では健康保険に加入していない人が推定で3割から5割と推定され、このような人々にとって高額な医療費を負担することがきわめて困難であること、医療費の抑制を目的としたマネージドケア7)が1983年以降に導入されたことなどがある。現在、マネージドケア産業そのものに対する批判とともに、このような医療サービスの規制は、予防可能な疾病の悪化や未熟児の死亡の原因になっているのではないかという指摘や、クライエントに必要なケアの供給よりも財政的な利益を優先しているという批判などがあり、患者のアウトカムに焦点をあてたケアシステムの構築が期待されている8)9)。
今回、在宅療養を必要とする小児のケア提供のあり方を検討するために、1998年から1年間にわたって、米国の大学病院を中心に小児の在宅療養に関する調査を実施した。その中で、複雑なケアを常時必要とする小児のケースマネージメントを専門的に扱うミネソタ大学の外来部門にある特別外来U-Special Kids Program注1)のケア提供システムとその実践を直接観察し、看護師に面接する機会を得た。同時に、病棟におけるケースマネージャーの業務と役割、病院から在宅へ移行する患者と家族を支援するための患者教育センターにおける看護実践、小児ICU外来におけるPNP(Pediatric Nurse Practitioner; PNP)のケアについても調査した。この機会をとおして、ミネソタ大学医療センターで治療を受け在宅療養へ移行した患者とその家族に対してケア提供がどのように行われているか、またシステム内における看護師の役割の一端を明らかにすることができたので報告する。
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