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Ⅰ.はじめに
医療制度の様々な改革に伴い、国民の医療に対する関心や期待も高まっている。さらに、科学技術の発展に伴い、医療における診断・治療技術も高度化、複雑化する中で、看護師にも様々な専門的な知識と技術が必要とされるようになった。しかし、臨床現場が期待する能力と看護基礎教育課程において習得する知識・技術には大きな差が生じているという報告もあり(阿曽:2001,宗村:2001,山田:2000,文部科学省高等教育課:2002,厚生労働省医政局看護課:2003,厚生労働省医政局看護課:2004)、看護の質を保証する上でも看護師の実践能力育成が強く求められるようになった。その中で、看護基礎教育の充実に関する報告書が出され、看護系大学においてカリキュラム内容が検討されてきた。当然ながらその中には、ケアの受け手である対象者の看護師に対するニーズを反映することが求められる。
特に、高齢社会である我が国は高齢者の人口は増加する一方であり、通院者率は65歳以上から急速に増しており、2030年には後期高齢者(75歳以上)が現在の2倍近くまで増加すると推計されている(看護白書,2007)。
こうした現状から、高齢者がどのような能力をもった看護師に援助を受けたいと思っているのかを把握することは、高齢患者の満足度を高める上で重要である。そのため、看護基礎教育においては、高齢者を単に65歳以上と捉えるのではなく、前期高齢者(65〜74歳)、後期高齢者(75〜84歳)と具体的に区分して対象の把握や理解を深め、それぞれのニーズに対応した看護援助が提供できる看護師を育成することが必要である。
しかしながら、筆者が調べた限りにおいては、高齢者のケアや高齢者の健康、医療機関、医師に対するニーズに関する調査(島・安達,1990;杉澤・杉原・KimHye他,2000;瀬畠・杉澤・フェターズ他,2002;瀬畠・杉澤・フェターズ他,2002;中小企業事業団,2001;塚原・本林・高島,2004)はあるものの、前期・後期高齢者が看護師に期待する能力や前期・後期高齢者のニーズの相違について検討した報告は見当たらなかった。
そこで、本研究では、前期高齢者、後期高齢者のニーズに応えられる看護師育成への示唆を得るために、前期・後期高齢者が看護師にどのような能力を期待しているのかを明らかにする。
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