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Ⅰ.緒言
対象者へのより良い看護の提供のため、看護職者は対象者にふさわしい援助をおこなう。医療機関における働きと同じように保健活動における地域住民への関わり等、看護職者がその対象者と接する機会は幅広い。一般的に、高齢者に対してはゆっくりとした身体介助や声掛けなどがなされ、躍動的で活発な小児に対しては気持ちを伝える際の表情や話し方のスピードなど、各々の活動性に応じた援助がおこなわれる。その一方で、気分が高揚したときの高齢者へはその高揚の程度に合わせたテンポなどの配慮が、また、小児に対しても場合によってはゆっくりとした口調で会話をすすめるなどの配慮が望ましいと感じられる場合がある。相手の年齢や気分の抑揚などの状況に応じて、看護職者はしばしば話し方のスピードや援助のテンポなど時間的な間を調整したり変化させたりして、対象者にふさわしい援助をおこなっている。
間やテンポの感じ方あるいは受けとめ方の違いから生じる結果や影響については、例えば、ビーティら(G.W. Beattie et al.,1982)が会話のピッチの低下によって相手からしばしば話を割り込まれてきた某国の元首相の話し方を記しているほか、松田(2004)が自分好みのテンポを崩された場面で生じる精神的・生理的負担を記し、大野木(2005)がタイミングやテンポといった「間合い」の良し悪しと人間関係を記すなど、話し方だけでなく身近に経験する日常の出来事に関して様々に述べられている。また、看護や医療のコミュニケーションについては、患者やその家族との面接における相手の気持ちの受けとめや相手への上手な働きかけのために適度に「間」を置くことを記した中田(1998)など、間や声の調子、スピード、テンポの大切さについて記されたものは数多い(日野原,1988;坂口,1991;町田ら,2001)。
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