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Ⅰ.緒 言
頭頸部領域には,生命維持の機能(呼吸・咀嚼・嚥下)と,社会生活を送るうえで重要な機能(発声や聴覚・嗅覚・味覚など)がある.頭頸部がんの放射線療法(radiotherapy:RT)は,機能形態温存を利点とし1),特に,薬物療法を併用する化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)は,生存率の上乗せ効果が認められており2),臨床で適用されることも多い.
頭頸部がん領域の放射線療法は,口腔内の照射が含まれる場合,口腔粘膜炎による口腔・咽頭痛,口腔乾燥,味覚障害の発生頻度が高い3).これらの有害事象はすべて主観的症状であり,経口摂取を困難にするだけでなく,QOLの低下に結びつきやすい4).そのため,看護師は栄養サポートチームと協働して積極的に介入する必要がある.しかしながら,頭頸部がん患者に対する看護介入は,治療法の違いから生じる有害事象の発生時期の違い(たとえば,RT単独でも経口摂取が困難になり経管栄養をすることがある),また有害事象が患者の主観に左右されることから生じる訴えの個人差,さらにはこれらの条件を見抜く看護師の経験知からの実践5),看護介入するうえでのプロトコルが統一されていないなどの要因から,一貫したケアを困難にしていると考える.
頭頸部がん放射線療法に関する先行研究では,治療中の食事・栄養摂取量をアウトカムとし治療別で比較した研究6)や有害事象の経時的変化と関連性を明らかにした研究7),急性期有害事象に対する口腔ケアや皮膚ケアの介入プロトコルを検証した研究8)などがあり,治療中の患者の食事摂取に関連する有害事象の変化や特定の介入プロトコルの効果が明らかとなっている.また,岡光ら9)は,患者の放射線療法の副作用に対する苦痛や食べられない辛さなど,多くの「食」の問題を報告している.臨床の場において,特にCRTで経口摂取量が低下するため,経腸栄養介入を試みるが,患者は抵抗や拒否感を示すことがある10).経口摂取は患者の意思に基づく自発的な行為であるため,患者の意思に大きく影響する主観的症状に焦点をあてた看護介入を検討する必要があると考え,本研究に取り組んだ.
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