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Ⅰ.はじめに
肺がんは,検診での胸部異常陰影の指摘で発見されることが多く,大半が無症状である.また,肺がん患者の約2/3の症例が手術不能な進行がんであり,5年生存率は20%以下で難治性のがんとみなすことができる1).進行肺がんに対する化学療法は,ほとんどの症例でがんの進行を遅らせ,延命を期待して,薬物の種類を変更し治療を継続する2)こととなり,療養生活は長期となる.
化学療法を受ける患者は,さまざまな不安や問題を抱え3)4),継続治療中も生と死の間で思いが揺れ動き不安と闘いながら5),化学療法施行を糧に生きる希望をもち,病気を受け入れながら治療を継続していくためにさまざまな工夫をしている6).また,身体症状が増強する時期や苦痛をもたらす刺激や負担を感知し,今までの経験や知識を活用して予防的な対応をしたり,生活の工夫をすることにより症状の緩和や悪化を防止している7)8).加えて,化学療法を受ける際にはセルフケア能力が必要であり9),セルフマネジメント力を習得することが自己効力感向上につながること10),セルフケア行動を促進する要素には,不安の緩和や闘病意欲の継続,生活調整のための情報の獲得があることが明らかにされている11).
がん患者の情報ニーズは病気や治療に関するものが多く,そのおもな情報源は医療者であり12),満足できる医療や支援活動に関する情報を求めている13).患者は,自分なりに情報環境を構築し,その時の症状や生活状況に適した情報を入手している14)が,情報の使用方法などが伝えられていないことや,患者のヘルスリテラシー不足などが指摘されている15).また,氾濫する情報の取捨選択の問題16)や,患者自身が情報を取り込むことで生活の質が向上するが17),適切な情報を得られていないことも指摘されている16).化学療法を受ける肺がん患者を対象とした先行研究は,コーピング18)やエンパワーメント19),症状体験に伴う情緒的反応20)など心理面に関する研究が多く,患者に合わせた具体的な情報提供や繰り返し提供することの必要性が述べられている.
以上のように,患者にとって必要な情報を適切な時期に,効果的に提供する重要性が指摘されているが,患者が得ている情報の内容や時期,獲得方法や活用の実態,そして提供された情報の患者にとっての意味などについては明らかにされていない.そこで本研究では,化学療法を受けながら療養生活を営む肺がん患者の検診から現在までの治療経過における情報にまつわる体験を明らかにすることを目的とした.
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