Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
Ⅰ.緒 言
生涯のうちにがんと診断されるのは,男性の2人に1人,女性の3人に1人といわれ,すべてのがんを含めた5年生存率は56.9%,胃・大腸がんは60%以上,乳がんは80%以上である1).この状況を受けてがん対策推進基本計画では,2007年からの10年目標に,「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が加わり,がん患者の就労を含めた社会的な問題への取り組みが明言化された2).がんサバイバーとは,がんと診断された時からその生涯を全うするまでを意味する3)ことから,治療の時期,長期生存の時期,再発,終末期に至るまで,就労や社会で担う役割上の問題点を解決できるよう支援が必要である.
がんサバイバーの就労問題については,外来がん化学療法や手術体験者を対象にした研究が多く,職場復帰時期の判断は,医療者から受けた説明よりも患者自身が職務内容などで判断しており4)〜7),肺がん術後患者では,2週間以内から3カ月以上と幅がある8).海外の報告では,乳がん患者で約6カ月,泌尿器がん患者で5週間と,がん種による職場復帰時期の差を認めた9).このように,実際の復帰時期は医療者の考える復帰時期と異なり,その時期にも大きな幅があることがわかる.治療による有害事象や障害が,患者の仕事内容にどのように影響を与えているか,職場との関係づくりを行ううえで必要な情報は何かを,医療者側が理解し,積極的に介入する必要がある.
Shortら10)の報告では,5人に1人のがんサバイバーが治療中にがんに起因した障害をもち,そのうち50%が障害をもちながら就労しており,脳腫瘍,頭頸部がん,Stage Ⅳの血液がん患者では,最も深刻な障害をもつか離職を余儀なくされていた.長期にわたって影響を与える障害をもつがんサバイバーの就労支援には,医療者が行う症状コントロールやリハビリテーションに加え,職場の理解が不可欠だと考える.
米国の研究11)では,がんサバイバーの職場復帰を阻害する要因は,職場からのサポートがない,肉体労働,頭頸部がんの罹患だと報告されている.また,がんサバイバーが職場から受けている最大のソーシャル・サポートは,同僚からのサポートであり,もっと受けたいサポートは産業医療従事者からのサポートであった12).日本でも,高橋ら13)のプロジェクトにより,ソーシャルワーカー(medical social worker;MSW)向けの就労支援相談に関する冊子や,産業看護師向けガイドブックが作成され,がん患者の職場復帰を支援するための取り組みが始まっているが,企業制度や同僚の支援が受けにくい自営業,第一次産業のがんサバイバーに対する就労支援のあり方を研究したものは見当たらない.
本研究は,第一次産業を担う人の割合が高いと考えられる東北地方に住むがんサバイバーに必要な看護支援を検討するための前研究として,東北地方に住む,がんと診断を受けて外来通院しているがんサバイバーの就労の実態を把握することを目的としたパイロットスタディである.
Copyright © 2015, Japanese Society of Cancer Nursing All rights reserved.