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Ⅰ.はじめに
前立腺悪性腫瘍(以下,前立腺がん)は,世界的に罹患率の高いがんである.独立行政法人,国立がん研究センターがん対策情報センターによると,2008年のデータでは男性がんの中で前立腺がんの罹患数は第4位であり,年代別にみても前立腺がんの罹患率は60歳代以降急増している1).前立腺がんの治療法としては,ホルモン療法,放射線療法,手術療法などが確立されている.A大学医学部附属病院泌尿器科では前立腺がんに対する手術療法の1つとして2010年10月にDaVinci Sergical Systemを用いて行われるロボット支援下根治的前立腺全摘除術:robot-assisted radical prostatectomy(以下,RARP)を導入し,すでに約170例(2013年12月)の実績を上げている.RARPは,立体画像を見ながら手術ができ,ロボットアームの動きの自由度の高さにより繊細かつ迅速な手術操作を容易に行うことができるという特徴がある.RARPは2012年4月から保険収載された先進医療の1つである.A病院では,保険適応となる前から待機患者は多く,RARPに寄せられる患者の期待の大きさがうかがえる.
手術療法を受ける患者は,生命を脅かすがんという病に罹患したというストレスと,さらに手術療法を受けるという二重のストレス状況におかれている.
一般的にがん看護では,心理的・身体的・社会的側面への援助が非常に重要になる.
前立腺がん看護分野においても,先行研究2)では根治的前立腺全摘除術を受ける患者が術前に抱く思いが明らかにされている.しかしながら,これらに影響を与える要因については報告されていない.また,前立腺がん患者のquality of life(以下,QOL)に焦点を当てた研究3)や術後の機能障害に関する研究4)や前立腺摘除術や前立腺がん密封小線源療法を受けた患者の心理に関する研究5)6)は散見するが,RARPを受ける患者の心理的側面について,看護学の視点で調査した研究はまだ少ない.そこで,RARPを受ける患者の心理的適応に関して心理的・身体的・社会的問題が,なんらかの影響を与えているのではないかという仮説を立てた.DaVinci Sergical Systemは現在のところ日本国内で限られた医療機関にしか導入されておらず,ロボット支援下の先進医療という特徴もあり,患者の手術に対する期待度も高い.今後もDaVinci Sergical Systemを導入する施設が増え,手術件数の増加が予想される.そこで,RARPを受ける患者の心理的適応に関連する要因を多面的に明らかにすることは,RARPを受ける患者の看護介入を検討するうえで貴重な資料となりうる.心理的適応の指標として,ガンサバイバーシップの概念に基づいて考えるうえでは,患者が自覚している感情や身体的問題をより広義に捉える必要がある.そこで本研究では,RARPを受ける患者の心理的適応に関して社会的背景や,心理的側面として気分状態に加え,身体的側面として排尿に関するQOLがどのように関連しているかについて明らかにすることを目的とした.
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