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Ⅰ.はじめに
多発性骨髄腫(multiple myeloma;MM)は,骨髄中の形質細胞が腫瘍化した疾患であり,60〜70歳代の男性に多い.罹患率は人口10万人あたり3〜4人程度とされ,罹患率,死亡率ともに増加傾向である1).多発性骨髄腫の治療は,初期治療,維持療法,再発・難治性と病期によって異なり,従来の標準的治療だけでは完全寛解には至らず,長期的には再発・再燃をきたすことも多い.そのため,より安全で有効な新規治療薬の開発が行われ,治療が推奨されている2)3).
多発性骨髄腫の新規治療薬として,2006年12月にボルデゾミブ4)(販売名ベルケイド®:以下,ベルケイド)が日本国内で承認された.ベルケイドは世界で初めて臨床応用されたプロテアソーム阻害薬であり,再発・難治性多発性骨髄腫に対する高い治療効果が示された5)6).さらに,未治療多発性骨髄腫に対する治療効果も示され7),2011年9月からは,未治療多発性骨髄腫に対しても適応が認められた.そのため,ベルケイドは幅広い多発性骨髄腫患者の治療に貢献できる薬剤になっている.
ベルケイドの重大な有害事象として,骨髄抑制や肺障害,腫瘍崩壊症候群などが挙げられる4).そのほか,臨床上では末梢神経障害などの生活機能に影響を及ぼす有害事象が多く観察され,治療効果が得られても治療前と同様の生活を送ることが困難な者がいる.また,ベルケイドは再発・難治性多発性骨髄腫に対する有効性が示されているが,完全に治癒するわけではないため,治療効果に大きな期待を抱く一方で,不安が残るまま治療を続けている者がいる.加えて,ベルケイド療法は初回治療以降,外来に移行するため,退院後の患者の生活は見えにくくなり,医療者は有害事象の観察はできていても,有害事象が日常生活に及ぼす影響や,治療への思いを理解しにくい現状がある.このような背景から,患者と医療者との認識には乖離が生じやすく,ベルケイド療法の継続を支援する看護の検討には,患者の主観的な体験を理解することが重要である.
造血器腫瘍患者の体験に関するわが国の看護研究は,おもに造血幹細胞移植を受けた造血器腫瘍患者の体験に関する研究8)9)が行われている.そして,海外で行われている多発性骨髄腫患者の体験に関する研究10)〜12)の多くは,病気のつらさに焦点が当てられている.しかし,再発・難治性多発性骨髄腫にとって数少ない治療の選択肢であり,有効とされるベルケイド療法に,有害事象がつらくても延命に期待を抱いて治療を受ける,患者の主観的な体験を明らかにした調査は見当たらない.そこで本研究では,ベルケイド療法を受けている多発性骨髄腫患者を対象に,主観的な体験を明らかにすることにより,治療を受けている患者の看護について示唆を得ることを目的とした.
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