発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100020
- 有料閲覧
- 文献概要
ある小さな会議の席上で,ショックな発言を耳にした.その発言者である医師は,「看護が看護過程にPOS論理を活用していたころ,これで看護実践は患者中心の展開になると期待した.しかし結局,アセスメントは医学知識を根拠にしたものが大勢を占め,患者とのかかわり方は一方通行で何ら変化をみず,生活の臭いを感じられるような患者主体の援助には至っていない」と語り,また「その打開策としての看護診断の導入に,アセスメントの向上を期待したが,現状はなお低迷のままである」という意見を述べた.その医師は難病患者を抱えながら,長年,生活を支援する看護に期待を寄せて仕事をしてこられた1人であるから,このような発言になったに違いない.基本的な何かが欠落していると言いたげであった.
しかし,看護過程にPOS論理を活用して使いこなすことができれば,看護は理路整然となり,患者との相互作用を前提としながらの subjective data が大事にされるメリットも大きいはずであり,看護過程やPOSの構造上の欠陥は見あたらない.同様に,適正な臨床判断に基づいた看護診断であるならば,看護の推進に大きな力となるはずのものである.これらは,理屈だけの見解であろうか.ささやかな経験からではあるが,どのような方法論を用いようとも,必ず長所・短所がある.要は,長所を十分に生かしながら短所を見極めて改善していく力の不足が問われているのかもしれない.あるいはもっと低い次元で,それらの活用のプロセスの基本的なところで,何か課題が生じているといえるのであろうか.この後者の点を深めてみたい.
Copyright © 1999, Japan Society of Nursing Diagnosis. All rights reserved.