平成22年度看護研究助成 実績報告書
腹膜透析患者の嗅覚と透析効率との関連
宇賀神 ゆかり
1
1国際医療福祉大学大学院
pp.14-16
発行日 2024年4月30日
Published Date 2024/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200338
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本邦における腹膜透析(peritoneal dialysis:以下,PDと略す)の適正透析は,日本透析医学会から2009年に発行された『腹膜透析ガイドライン』(日本透析医学会腹膜透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ,2009,p. 293)において,「透析療法の基本である『溶質と水分の除去』が適切である状態」と定義されている.また,PD量は週当たりの尿素Kt/V(以下,透析効率と略す)で評価し,適正透析量として,残存腎機能と併せて最低1.7以上を維持することが望ましいとしている.十分な透析がなされず透析不足を引き起こすと,腎機能の阻害,体液過剰や栄養状態の悪化,尿毒症症状などを引き起こす可能性も『腹膜透析ガイドライン』(日本透析医学会腹膜透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ,2009)に記載されている.
Griep et al. (1997)は,慢性腎不全患者(腎移植患者,血液透析患者,PD患者,腎不全患者)の嗅覚機能の研究において,嗅覚機能と尿毒素の蓄積の程度に関連があったことを報告している.また,Steiber et al. (2004)は末期腎不全患者(血液透析治療中の患者)と健常人の嗅覚機能と主観的包括的栄養評価(Subjective Global Assessment:以下,SGAと略す)を比較し,末期腎不全患者でSGAの低い患者は嗅覚機能障害が示唆されたと報告している.これらのことから,PDにおいて透析効率が低い患者は,尿毒症症状を引き起こし嗅覚機能が低下していることが予測されるが,PD患者についての研究報告は少なく明らかにされていない.
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