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Ⅰ.はじめに
2012年,日本透析医学会は,「慢性血液透析療法の非導入/継続中止(見合わせ)」に関する血液透析療法ガイドラインワーキンググループから『慢性血液透析療法の導入と終末期患者に対する見合わせに関する提言(案)』を発表した1).日本透析医学会がこの提言(案)を策定することに至った経緯については,2010年に慢性血液透析療法ガイドライン委員会が発足し,討議のなかで,臨床の現場でしばしば遭遇する病態である,体外循環としての透析療法が実施困難な患者,透析療法を実施することでかえって生命予後を悪化させる懸念がある患者,慢性透析療法を継続してきたけれど多彩かつ重大な合併症を併発し,透析療法の継続が困難な患者などが増え続けている現状を看過できないという意見があった.これらの終末期患者への対応を示すべきではないかという点で委員会内の意見が一致した.また,2011年の第56回透析医学会学術集会におけるアンケート調査の結果,「討議すべきである」,「学会としてなんらかの指針を提示してほしい」という意見が圧倒的多数であり,会員の支持を得て委員会において継続討議がなされた.そして,2012年の第57回日本透析医学会学術集会の場でアンケート調査の結果報告ならびに提言(案)を示し,広く意見を求めることとなった.
この提言(案)の発表は,透析医療領域だけではなく,一般紙による新聞掲載などの反響があり,多くの国民の目にふれることとなった.某紙は「人工透析中止も選択肢学会が提言案終末期本人側希望で」というタイトルで,「人工透析が必要な患者が,回復の見込みがない終末期を迎えた場合,本人や家族が透析を望まなければ,中止も選択肢とする提言案を日本透析医学会がまとめた.終末期医療を巡っては日本救急医学会が2007年条件付きで人工呼吸器の中止ができる提言をまとめている」2)と報道している.
2013年2月,本ワーキンググループに看護師の参加を求められ,日本透析医学会委員会委員の委嘱を受け,日本腎不全看護学会から1名の看護師が議論に加わることとなった.
まずは,提言(案)を示す.
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