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医療の高度化と専門化にともなって、患者への情報開示も進み倫理的問題に直面する場面も増加している。このような保健医療福祉を取り巻く状況の中で,患者の人権や尊厳を擁護し主張する立場である看護師の役割はますます重要になってきている。また、看護師はさまざまな臨床において葛藤場面に遭遇するが,それらを倫理的な意思決定にまで高めていくにはまだ課題も少なくない。そこで、本シンポジウムでは、リエゾン、精神、救命救急など、さまざまな臨床の第一線で看護師たちの倫理的意思決定の支援を行っている演者の方々に、その実践や課題について語っていただくことにした。
最初に登壇した山内典子氏(東京女子医科大学病院・精神看護専門看護師)は、「看護における倫理的意思決定のプロセス―:ケアの倫理を日常の看護の中で実践すること―」と題し、看護師は患者にとって最も身近な存在としてケアにあたり、関係の築きを通して患者の本当の声をキャッチしていると前置した上で、患者の悩みに揺れ動く感情や人生の意味付けの変化を感じ取り、チーム全体を巻き込んで倫理的意思決定を行うことの大切さを述べた。関係する多職種が互いに尊重し合い、チームを巻き込みながら患者と家族の安寧のためにケアにおける倫理を貫く倫理的意思決定のプロセスについて事例を用いて説明された。次に、江波戸和子氏(薫風会山田病院・精神看護専門看護師)は、「精神科病院における倫理的意思決定のための支援」と題して、倫理問題で実感する精神科病院の特殊な状況に言及した。すなわち、治療上やむを得ない手段としての病棟の閉鎖性と行動制限の存在、経済的要因に基づくスタッフ資源の乏しさと教育背景、そして一般診療科にはない「意思に基づかない入院」という入院形態である。このような課題を抱える精神科病院において、当初はさまざまな価値の衝突や壁に当たりながらも、事例検討やコンサルテーションを重ねることで倫理的意思決定の支援への学びを深めていったプロセスが紹介された。最後に、浅香えみ子氏(独協医科大学越谷病院・副看護部長/救急看護認定看護師)は、「救急医療の場面における倫理判断の方法と活用」と題して、救命救急センター開設当初は急性病態への対応のみに焦点が置かれがちであったものが、現在では医療者と患者・家族の倫理調整はもとより、患者・家族間の関係性のアセスメントの比重が高まっていることに言及された。そして、救急場面における倫理判断は社会情勢の変化に伴ってその方法にも変化が生じていることを報告された。
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