◆特集 アフォーダンスと臨床
知覚と行為の評価と治療
野村 寿子
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1(有)ピーエーエス
pp.542-545
発行日 2000年12月25日
Published Date 2000/12/25
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周りに気づく
極端な言い方をすれば,私達は特定された環境に,ある一定の的確な動作を行うことが適応だと考え,そのための技術や知識を学ぼうとし,また教えようとしている。しかし,私達を取り囲む環境の特徴とは多様で,しかも持続しつつ変化するものである.その環境との関わり合いの中で,導かれるように私達の行為は生まれる.また,環境の持つ特徴とは関わる者によって多様に意味を持つ.例えば,肌で感じた風は,木の葉の揺れを視ることで知覚することができるし,風鈴の音を聴くことや運ばれてくる匂いを嗅ぐことで知覚することもできる.つまり環境と関わる手段と知覚の方法は,多様に存在するのである.
環境にそなわる性質で,環境と関わる動物行動によって表れる性質のことを,Gibsonは「アフォーダンス」と呼んだ.たとえば,筆者が主宰する絵画教室において「ひまわり」をテーマに描かれた作品を並べて見る.どのひまわりも1つとして同じ物はなく,それぞれの人が個性的に生き生きとした「ひまわり」を描き出している.形が表すひまわり,色が表すひまわり,葉っぱに隠れているひまわり,ひまわりに寄って来る虫達,グンと伸びたひまわり,明るいひまわり,勢いのあるひまわり,など.どれも「ひまわり」だという実感を見る者に与えると共に,ひまわりの多様性,つまりひまわりのアフォーダンスに気づかされるものである.
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