◆特集 作業療法における行為障害
高次神経機能障害に対する作業療法の立場から
二木 淑子
1
1昭和大学医療短期大学作業療法学科
pp.189-192
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
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今回は,高次神経機能障害領域での作業療法士の立場から,実際のアプローチの中で行為の障害について考えていることを中心に述べたい.
1994年8月号の『神経研究の進歩』で,失行とその周辺という特集が組まれ,その数年前から失行論の歴史的変遷や総括的機序の見直しが始まっていることが窺われる.古典的な分類以外に,脳梁失行や前頭葉性行為障害などを含めた,新たな行為障害の枠組みによる分類の作業が始まっている.1996年の雑誌『神経心理学』の編集者への手紙の中で,「前頭前野病変による行為障害:模倣行動とは?」というやり取りがあり,この中のLhermitteのimitation behaviorの定義や判断基準についてなどのやり取りは,外野席でも興味深いものがあった.それはともかく,次号の仲裁にはいるような形で「『行為』・『行動』という用語の神経心理学的使用法について」という一文があった.これが,神経心理学的枠組みでの「行為」という用語の使用法について触れていると思われるので紹介したい.望月1)は,用語の使い方として少なくとも7つの軸が存在し,行動の内,ある観点からの軸から眺めたとき特別な範疇に含まれるものを「行為」と呼ぶように思う,と述べている.その7つの軸として,意図性,能動性,身体に関する局所一全体性,動作一結果性,個一集団性,ヒト性の軸を列挙している.用語として明確にするには,身体に関する局所一全体性の軸がよいのではという結論だったように思う.意図性や能動性の軸が重要だからこそ,行動ではなく行為という言葉を使うのではないかと思うが,なかなか一筋縄ではいかない問題であろう.
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