◆特集 ケーススタデイ
保護室内での作業療法の意義
八尋 緑
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1福岡大学病院精神神経科
pp.61-65
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
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Ⅰ 目的
一般に、閉鎖病棟や保護室が利用される目的には、無断離院や事故の防止の他に、対人関係を積極的に回復させるという意味がある。即ち、不安に圧倒され自己をコントロールできなかったり、自殺念慮のある人、異常体験に支配されているため行動規制が必要な場合、心的負担を軽減し連帯感情をとりもどすためなどである。しかし、保護された状況の中では落ちついても、外に出ると元気の良い人たちの中で再び圧迫感や孤立感を味わい、引きこもりや自閉傾向に陥ることがある。そこで、対人関係が広がったり、あらゆる心的負担を自分で対処しなければならなくなるという変化の中で、患者の不安や緊張を緩和するために、何らかの方法が考えられる必要があるとされている。
さて、わたくしは、保護室使用中の患者に対する作業療法について、次の様な考えを持っている。保護室という物理的に枠付けられた空間にいる間は、保護室という空間自体が患者の行動決定を肩がわりするものであり、主治医・看護婦からも一対一の個人的ケアを受け関係が作り上げられていく。しかしその反面、保護室は自由を束縛し、主治医はその保護室に閉じこめて規制を加える人であるし、看護婦は生活の面倒を見てくれるが、生活全体に管理的となる存在でもある。こういう状況にある患者に、作業療法士が関与する場合には、主治医・看護婦とは異った、特色を生かした接近をしなければならない。即ち、作業療法は活動を介しての接近であるだけに、対人欲求がある反面、接近不安の強い患者にとっては、活動が適当な距離を保つ役割を果たしてくれる訳である。
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