- 文献概要
医者としての経験を積んでいくと,「医者冥利に尽きる」と思える瞬間がある.数多くはないが本当に幸せな瞬間である.骨軟部腫瘍医としても,リハビリテーション科医としても忘れられない症例について紹介しようと思う.
患者さんは29歳で恥骨発生の軟骨肉腫を患い,腫瘍広範切除を施行後,再発のために3回の広範切除を受けた.4回目の再発で粒子線治療を選択したが病変が再増大し,凍結療法を3回施行した.その後も局所制御できずに43歳時に腫瘍広範切除,hip transposition法を行った.その入院中に,私は担当医の1人としてかかわった.複数回の手術,粒子線治療や凍結療法施行後であり,条件はこれ以上ないほど悪かった.膀胱壁切除と尿管膀胱吻合,大腿静脈の人工血管置換,坐骨神経合併切除,術中に腸管損傷をきたしたため人工肛門の造設まで行った.手術時間は24時間.まさに外科系チーム総動員での大手術となった.何とか腫瘍は根治的に切除できたものの,術後感染で敗血症になり創部2度の洗浄,デブリドマンを行った.
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