昨日の患者
外科医冥利
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.293
発行日 2014年10月22日
Published Date 2014/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200059
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- 文献概要
医師と患者との関係は基本的には診療に関してだけであり,診療行為が終了すれば互いに無関係となる.しかしながらごく稀には患者さんやその家族に,医師は一生をも左右する大きな影響を与えることがある.
研究会終了後の懇親会で,突然見知らない医師から声を掛けられた.「実は私の父は30年程前に,先生に胃癌術後の吻合部狭窄に対して内視鏡的に切開拡張術を施行していただきました.当時私は高校生でしたが,生来健康であった父親が胃癌で入院して驚きました.さらに胃全摘術を受けましたが,縫合不全となり全身状態が大変不良となりました.ドレナージ手術などでなんとか縫合不全は治癒しましたが,吻合部狭窄が生じました.バルーンで頻回に拡張しましたが,症状はまったく改善しません.入院期間が長期に及び,子供ながらにも将来を大変心配しました.そうしていたら大学から若い先生が来て,内視鏡で狭窄部を切開拡張すると一発で症状が改善しました.むせたり吐いたりしていた症状が,1回の内視鏡治療で治ることに驚きました.その後の経過は良好で,父はいまだ元気に暮らしております」と,語った.
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