Japanese
English
教育講座
ヒト脳の側性化と臨床—言語と空間性注意の神経ネットワーク
Hemispheric Lateralization of the Human Brain : Neural Networks of Language and Spatial Attention
石合 純夫
1
Sumio Ishiai
1
1札幌医科大学医学部リハビリテーション医学講座
キーワード:
ヒト脳
,
側性化
,
言語
,
空間性注意
,
神経ネットワーク
Keyword:
ヒト脳
,
側性化
,
言語
,
空間性注意
,
神経ネットワーク
pp.182-191
発行日 2022年2月18日
Published Date 2022/2/18
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
脳機能のうち要素的な運動と感覚の機能は,他の哺乳類と同様に,人においても大脳半球が主に対側の半身をつかさどり,左右差はみられない.しかし,人は「言語」を操り,時間的・空間的にその場にない事象について,語ったり,文字で記したりできる.右利き者が大半であるが,右手を支配しているのは左大脳半球である.言語についても,右利き者の大半において,左大脳半球が話す・聞くに加えて読み書きの機能を担っている.さらに,左利き者の約2/3でも,左半球に何らかの言語機能が存在している1).このような左右の大脳半球における高次脳機能の役割分担を「側性化(lateralization)」という.左半球が言語性優位半球であるのに対して,右半球への側性化は何かというと,生きていくことで欠かすことのできない空間性注意の機能である.ヒトでは右半球の脳卒中後に,身体からみて左側の空間とうまく付き合えなくなる半側空間無視が起こる.サルでは,左右いずれの大脳半球損傷でも,対側性に半側空間無視が起こり得るが,たいていの場合は経過とともに改善する.ヒトでは,言語機能の側性化ほどではないが,空間性注意機能が右半球に強く側性化しているという特徴がある.図1にヒト脳の側性化を図示した.
手の運動野が壊れると対側の手の運動麻痺が起こる.これが,「局在論」の典型である.しかし,言語と空間性注意はこれよりもはるかに「高次な」脳機能であり,大脳半球の広範な部位が神経ネットワークを形成して機能している.本稿では,失語と半側空間無視という臨床症状の理解を深めるために,言語と空間性注意のネットワークについて概説する.
Copyright © 2022, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.