Japanese
English
教育講座
慢性疼痛の診断と治療に対する課題
The Tasks for Diagnosis and Treatment of Chronic Pain
紺野 愼一
1
Shinichi Konno
1
1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
キーワード:
慢性疼痛
,
侵害受容性疼痛
,
神経障害性疼痛
,
健康障害
,
ドパミンシステム
Keyword:
慢性疼痛
,
侵害受容性疼痛
,
神経障害性疼痛
,
健康障害
,
ドパミンシステム
pp.661-666
発行日 2021年6月18日
Published Date 2021/6/18
- 販売していません
- Abstract 文献概要
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- 参考文献 Reference
はじめに
2020年の国際疼痛学会で痛みの定義が改訂された.これによると,痛みは「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こり得る状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」(日本語訳:日本疼痛学会)と定義された1).定義の主文に記載されない内容が付記として加えられた.その付記は,以下の6つの点である.①痛みは常に個人的な経験であり,生物学的,心理的,社会的要因によってさまざまな程度で影響を受ける.②痛みと侵害受容は異なる現象であり,感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできない.③個人は人生での経験を通じて,痛みの概念を学ぶ.④痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきである.⑤痛みは,通常,適応的な役割を果たすが,その一方で,身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともある.⑥言葉による表出は,痛みを表すいくつかの行動の1つに過ぎない.コミュニケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではない1).このように,痛みは主観的な体験の表現であるために,客観的な評価が困難であり,標準的な評価法や診断法はいまだに未確立である.特に,慢性疼痛には解決すべき課題が多数存在する.
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