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福岡大学病院におけるがん患者のリハビリテーション依頼数は毎月100例前後あり,全依頼数の20〜25%を占めている.小児から80歳以上の高齢者まで年齢層も幅広く,入院目的も手術・化学療法・放射線治療とさまざまである.さらに,病状や患者背景などにより自宅退院される場合や近隣の関連病院へ転院する場合もあり,当院退院後の生活環境は多様である.このような多様性のためリハビリテーション治療のゴールも多様であり,ゴール設定が困難な症例も多い.したがって,がんのリハビリテーション治療についてはさまざまな視点からの調査・研究が必要と思われる.
数年前より近隣の施設のリハビリテーションスタッフとがん患者のADL評価や症例検討会を共同で行ってきた.在宅診療に携わっているスタッフも参加してくれるときもあった.The European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ),Karnofsky Performance Status(KPS),Barthel Index,Functional Independence Measure(FIM)などのスコアについて実際の症例や海外の文献を通して検討したが,すべての評価を全入院症例で行うのは時間を要し,他の業務に支障が出る可能性があるため現実的ではなく,KPS,Barthel Index,FIMを基本としEORTC QLQの評価は必要な症例に行うことが現実的であるとの結論となった.地域連携を円滑に行うためにも各施設が別個の尺度を用いるのではなく同一の尺度を利用するように取り組むことになった.同一患者の転院直前と転院直後のFIMに差が認められたこともあり,検証したところ,病衣の変化やトイレの構造や広さが影響していることが考えられた.医師の立場ではなかなか気づかない点であり興味深かった.症例検討(図1)では主にJonsen 4分割表を用いて行ってきた1).医師があまり注目していない点についてセラピストたちが問題点として提示することが多々あり,医師にとっても治療方針の決定や臨床研究を行ううえで必要な視点が培われる可能性があり有用と思われた.現在新型コロナウイルス流行のため中断しているが,オンラインなどでの再開を模索している.
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