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第57回日本リハビリテーション医学会学術集会(2020年8月19日〜22日)の3日目にあたる8月21日(金)に第6回リハビリテーション先端機器研究会が開催された.新型コロナウイルス感染症のため,学術集会はオンラインを複合したハイブリッド開催となった.教育講演71では,東京工業大学の鈴森康一先生より,近年世界的に開発が進んでいる「ソフトロボット」という新しいロボット像が示された.見慣れた金属製の固いロボットからは真逆の優しい動きをもった「人工筋肉」は,医療福祉分野などでの新たな可能性を十分予感させた.続く教育講演72では,名古屋産業科学研究所の大日方五郎先生から,ロボットとリハビリテーション医療における課題として,ロボットが得意な計測機能があまり使われていない,と指摘があった.外乱からの転倒や,義足の長さを変えるなど,自由に条件を設定可能な歩行シミュレータ動画を,興味深く拝見した.合同シンポジウムは,「リハビリテーション加算先端機器の普及に向けて」というテーマでロボット医療の豊富な経験をおもちの5人の先生が登壇された.今年度から診療報酬で新設された「運動量増加機器加算」は,リハビリテーション医学におけるロボット医療の普及を拡げる第一歩であり,保険適応になった代表的なロボットの現状と今後の展望が提示された.兵庫医科大学の内山侑紀先生は,上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGo®-Jを用いた脳卒中上肢機能障害の治療において,上肢近位で特に有効であるが,ADLに汎化されにくい点をどう解決していくかなど,さまざまな戦略を提案されていた.日本福祉大学の野間知一先生は,上肢リーチングロボットCoCoroe AR2の使用手順書の開発について発表された.免荷コントロールと神経筋電気刺激,振動刺激という促通刺激が複合されたロボットであるが,手順書や学生教育により,より間口が広がる印象をもった.藤田医科大学の平野 哲先生は,歩行練習支援ロボット ウェルウォーク®の実績に加え,今年発売された新機種WW-2000の特徴を紹介された.追加された歩行分析機能が,さらに練習設計を支援し,運動学習を強力に促進すると述べられた.日本医科大学の松元秀次先生は,歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイド®の多施設共同研究であるRALLY研究の成果を発表され,FES装着による中枢への作用にも言及された.秋田大学の松永俊樹先生は,L300フットドロップ・システム(NESS L300TM)の幅広い適応と使いやすさを紹介後,対麻痺への応用例も示された.総合討論を通じ,標準的な治療として普及するポイント,使用するほうのわれわれの姿勢や取り組みが重要と感じた.20年近く前に今大会長である島田洋一先生の指導のもと,アキレス腱の延長術とともに電極を埋め,FESで治療した片麻痺の脳性麻痺のお子さんにかかわらせていただいた.治療後に見た鮮やかな歩容の改善の記憶を思い出し,また新たな刺激を受けた研究会であった.
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