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教育講座
脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導
Guidance for Returning to Driving after Brain Injury
渡邉 修
1
Shu Watanabe
1
1東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科
キーワード:
脳卒中
,
脳外傷
,
自動車運転再開
,
高次脳機能障害
,
神経心理学的検査
Keyword:
脳卒中
,
脳外傷
,
自動車運転再開
,
高次脳機能障害
,
神経心理学的検査
pp.807-814
発行日 2019年10月18日
Published Date 2019/10/18
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はじめに
脳卒中や脳外傷などの後天性脳損傷者が社会復帰をしていくうえで,再び自動車を自ら運転できることの意義は大きい.しかし,昨今の認知症やてんかん発作などの脳損傷に起因する数々の痛ましい交通事故の報道は,医療者に対し,科学的な視点での脳損傷者に向けた安全な自動車運転のための能力の評価と指導を求めていることになる.脳損傷によって自動車運転事故の危険性は増す1).しかし,一方で脳損傷後に運転を再開した例の事故率は,一般の事故発生率や非脳損傷群と比較し有意差がなかったとする報告2, 3)もある.その理由は,医療者が,運転の可否を適切に評価し,脳損傷者が運転行動について多面的に注意を払っていることに起因している可能性がある.
米国医学会のガイドライン4)は,安全な自動車運転を実現するためには,①視覚(視力および視野),②認知,③運動・感覚の3要素が必要であると述べている.一方,わが国の道路交通法では,安全運転に必要な,「認知,予測,判断または操作」のいずれかにかかわる能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈する病気は,運転免許の拒否または保留の対象になるとしている.ここで重要な点は,一部の病気(認知症など)を除いては,病名によって運転能力が欠格している(絶対的欠格事由)とはせず,「認知,予測,判断または操作」能力の有無で運転能力を判断する(相対的欠格事由)点である.したがって,医療者はよりこれらの能力を評価する知識と技術が求められる.本稿では,特に,脳卒中および脳外傷などの後天性脳損傷者を対象に,運転能力の評価および指導について論述する.
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