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はじめに
東京2020が決まってからパラリンピックへの注目も高まっている.日頃さまざまな種目のパラリンピアンと接する中,障害とそれによって生じやすいスポーツ障害,リハビリテーション(トレーニング)による治療訓練について,主にパラリンピック正式種目の水泳・陸上・ボッチャについて症例の中から紹介する.上肢の欠損から生じる脊椎アライメントの変化や,それに伴う骨盤脊椎変性による障害がよくみられる.下肢についても日頃,欠損や術後で長下肢装具や義足を使用することで,脊椎変形を生じたり,二分脊椎のため前弯が強く,腰痛がなかなか治りにくい場合などがある.また,麻痺による障害がある場合,ベッドの上では筋力が発揮できず,水の中では四肢筋力が向上する例もある.その場合,障がい者スポーツでは競技において大切なクラス分けが行われるが,ベッド上と水の中で大きくパフォーマンスが異なる場合クラス分けが決まらないこともある.これに対し,ベッド上でもあるべき筋力の発揮ができるトレーニングをする必要がある.脊髄損傷から2次的に筋萎縮や高血圧などが生じ,車椅子の駆動障害や疼痛が生じた場合,関節固定術をするべきか,かなり難しい選択をすることがある.固定によってパフォーマンスが落ちてしまうことも考えられるし,疼痛がなくなることで,逆にパフォーマンスが上がるかもしれない.ときに上肢を駆使することで,腱の断裂が生じることもある.脳性麻痺7人制サッカーの選手では短下肢装具や靴装具,インソールを使うことで,走行が安定したり,疲労が軽減することもある.最近ではパラリンピアンから学ぶことも多い.脊髄損傷のレベルによって可能な運動は変わるが,そのために生じる恐怖感や転倒のリスクから十分に運動機能が発揮できなかったり,筋肉の萎縮が進んだりするケースもよく経験する.それに対して,いくつかの装具などを開発し,筋力を高めたり,筋肉の使い方を変えることで,より競技力の向上につながることもある.
障がいによっては多くの合併症があり,薬剤による関節障害も経験する.中には人工関節に置換したり,関節固定を行う場合もあり,その後スポーツをするうえで術者と意見が合わない場合もある.パラリンピアンにとって十分主治医と相談し,術部に負担のかからないようにできるだけよい方法を検討することも大切である.パラリンピアンの意見だけに耳を傾けられない場合もある.また,合併症で注意を要するものは,健常者と同様に心疾患である.健常者同様,高地トレーニングをする場合,心疾患や脳血管障害,呼吸器障害には内科医と相談し,無理をしないことも大切である.今回,経験で得た症例に考察を加えて紹介する.
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