- 文献概要
私が子どもの頃は,音楽はレコードを買って家で聴くものであった.しかし,現在ではスマートフォンや携帯音楽プレーヤーで聴く人が多数派になり,据え置き型の機器で聴く人は少数派になっている.さまざまな機器の発展と共に,レコードが買うものから借りるものなったと思ったら,レコードはCDに,あるいはインターネットを通じてダウンロードするものになっていった.このように新しい技術は前の技術にとって代わって普及していくものである.
米国マサチューセッツ総合病院のHessは,非侵襲的陽圧換気(NPPV)の普及は病院によって大きな差があるという調査結果を受け,新技術がなかなか広まらない理由について総説の中で触れている.Hessは,Rogersの「Diffusion of innovations」を引用しているが,この本は医学・医療に限らず社会におけるイノベーションのdiffusionすなわち普及,拡散の要素について,その学問的背景から記載している.これによると,新しいものを使用している人の割合のグラフはたいていS字カーブを描き,人々はその採用時期により次のようにカテゴリー分けされる.早い順から,2.5%のinnovators(イノベーションから採用される時期の平均期間より2SD以上早い人々),13.5%のearly adopters(イノベーションを早期に使用し始める人々,1SD以上早い),34%のearly majority,34%のlate majority,16%のlaggards(遅れている人々,1SD以上遅い)というように.そして,個々のイノベーションの採用に至る要素について言及しているが,まずイノベーションに出会うまでの状況が個々にあり,イノベーションについての知識,解釈を経て決定に至るという.決定に至ればそれで終わりではなく,実際の使用からそれが元に戻らないように固めていく段階を経るとされている.
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