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リハビリテーション(以下,リハ)医学は障害へのアプローチとして,固有の治療技術と障害管理技法を有する専門医学であり,公衆衛生上の疾病予防の段階では“第三次予防”に位置付けられています.ちなみに,“第一次予防”は健康増進・生活習慣改善,“第二次予防”は健康診断を含む早期発見・早期治療(合併症予防含む)です.この分類はリハを障害に対する機能回復や社会復帰に限定しており,以前より奇異に感じておりました.というのも,実際の臨床場面では,急性期より実施する早期リハはむしろ第二次予防に位置付けられるべきですし,リハ領域における腰痛予防などの介入も第一次予防に位置付けられるべきではないかと考えておりました.
近年,わが国の労働人口は高齢化し,中高年齢労働者の就労能力の低下,疾病の多発,労働災害の増加がみられています.さらに,人口減少と相まって将来の労働力を如何に確保するかも喫緊の課題となっています.加齢と就労の問題の本質は,就労能力と作業負荷量との不均衡であり,この不均衡を是正する対策の1つとして,労働者の身体能力の増進を図ることが重要視されています.大手鉄鋼メーカーの産業医として従事していたころ,第一次予防として産業保健の現場で実施される運動プログラムは,リハ医学で実施されるアプローチとの共通部分が非常に多いことを実感いたしました.リハ医学で活用されている障害者へのアプローチは,健常者が加齢により身体能力が低下したときにも応用可能です.この考え方は,障害と健常を区別するのではなく,障害の連続性・多様性を認めた国際生活機能分類(ICF)とも適合します.用語として“予防的リハ”が適切かどうかはわかりませんが,私どもが日常活用しているリハの技術や障害管理の方法を中高年齢労働者へ適用すること,リハ医学が産業医学・産業保健分野へ進出し,第三次予防の技術を第一次予防へ技術移転することは十分可能と考えています.
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