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発表後1年経った今日,話題になっている東良和氏らの論文1)を拝読しましたが,いろいろ疑問を感じ,筆をとりました.大腿骨近位端骨折後のリハビリテーション(以下,リハ)で2単位と6単位とで治療成績が変わらず,治療費で20万円差が出たというものです.本症の治療では,Zuckerman2)の「入院後24時間以内に手術をすること,手術後1〜2日目から立位,歩行などを行うことが重要で,術後2〜3日安静を取らせるという考えは間違いである」の説に共感していました.同じ頃,「48時間以上経って手術した例では24時間以内に手術した例に比べて1年後,3年後の死亡率が3倍高い」,という論文が出ました3).また「手術時期とリハ量の組み合わせから,早期手術よりもリハ量が歩行回復にはより大切」という論文もあります4).これらから,本症の治療では「早期手術と強力なリハが最も大切」と理解していました.常識的に考えて,高齢者で骨折前の状態を回復するためには早期手術と強力なリハ以外にないと思います.
ところがわが国では,「手術はできるだけ早く,遅くとも1週以内に.リハにはエビデンスが少ない」と整形外科ガイドラインに述べられ5),不審に思っていました.急性期病院と回復期病院を加えた在院日数は,日本80〜100日6),欧米7〜10日と10倍の差があるのも,手術時期とリハ量が関係していると考えていました.東氏らは「欧米では,日本と医療システムが異なり,大腿骨近位部骨折術後患者は早期にナーシングホームでリハを受ける」と述べておられますが,私の調べた範囲では,欧米でも自宅退院が重視されており,ナーシングホームは次の選択肢になっていると思います.病院での在院日数が長いことは,医療費を高騰させるだけでなく,肺炎や認知症が増え,治療成績を悪くするエビデンスも重視されていると思います.
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